親が亡くなり、自動車が残った。
名義変更や売却を進めようとしたとき、
「相続人の中に、知的障害のある家族がいるのですが……」
と、戸惑われる方もいらっしゃると思います。
ほかの家族の間では、誰が車を引き継ぐのか、おおよその話がまとまっている。
しかし、相続人の一人について、どのように意思を確認すればよいのか分からない。
家族が代わりに手続きを進めてもよいのか。実印や印鑑登録はどうすればよいのか。成年後見制度を利用する必要があるのか。
このような場合には、焦って名義変更や売却を進めるのではなく、まず相続人の状況と、車を今後どうするのかを整理することが大切です。
自動車は、不動産や預貯金と比べると、手続きが簡単そうに見えるかもしれません。
しかし、相続人の状況によっては、車1台であっても慎重に進める必要があります。
知的障害があることだけで、相続の手続きができないと決まるわけではありません
最初に大切なのは、知的障害があるという理由だけで、ご本人が相続について判断できないと決まるわけではないということです。
知的障害のある方であっても、車を引き継ぐことや売却することの意味を理解し、自分の意思を伝えられる場合があります。
一方で、財産の処分などについて判断することが難しく、法律上の支援が必要になる場合もあります。
大切なのは、障害の有無だけで判断するのではなく、ご本人がその場面で何を理解し、どのような意思を示しているのかという点です。
例えば、次のようなことを整理します。
- 車を誰が引き継ぐのか
- 車を売却する場合、どのようなことになるのか
- 売却代金を誰が受け取るのか
- ご本人にとって不利益な内容になっていないか
- ご本人が自分の意思を伝えられる状況にあるか
ご家族が普段から本人を支えている場合でも、日常生活の支援と、財産の処分について法的に本人を代理することは別の問題です。
「家族だから分かっている」「いつも本人の代わりに手続きをしている」という理由だけで、相続に関する同意まで代わりにできるとは限りません。
実印や印鑑登録にも注意が必要です
自動車の相続では、必要書類に実印を押したり、印鑑登録証明書を用意したりする場面があります。
そのため、相続人の中に判断能力に不安がある方がいる場合、実印や印鑑登録をどのように扱えばよいのか、悩まれることもあるでしょう。
しかし、実印があることや、印鑑登録証明書を用意できることだけで、本人が相続について適切に判断できているとは限りません。
反対に、知的障害があるという理由だけで、本人の意思を確認することができないと決めつけるのも適切ではありません。
大切なのは、印鑑の準備だけを先に進めるのではなく、本人の意思や判断能力、必要な法的支援の有無を含めて考えることです。
この点については、当事務所の関連記事「判断能力に不安がある家族と自動車の相続。実印や印鑑登録で注意したいこと。」でも取り上げています。

実印や印鑑登録について不安がある場合は、印鑑の準備だけで解決しようとせず、相続全体の進め方を整理しておきましょう。
自動車の相続では、誰が車を引き継ぐのかを整理します
親が亡くなった場合、残された自動車も相続財産の一つです。
車を家族の誰かが引き継ぐのか、売却するのか、使用しないまま保管するのかによって、その後の手続きが変わります。
相続人が複数いる場合には、遺言書の有無や相続人間の合意などを踏まえ、誰が車を取得するのかを整理する必要があります。
この点については、「自動車の相続。まずは何を、どうすれば良い?最初に確認しておくポイント。」でも取り上げています。

また、相続人を確定するためには、戸籍を集める必要が生じることもあります。
ただし、戸籍を集めることだけを先に進めても、誰が車を引き継ぐのかが決まっていなければ、その後の手続きが進まないことがあります。
今回のように、相続人の中に意思確認や財産管理について配慮が必要な方がいる場合には、通常の相続よりも時間をかけて整理した方がよいことがあります。
家族が代わりに同意して、車の名義変更を進めてもよいのでしょうか
例えば、父親が亡くなり、相続人が母親と子ども2人だったとします。
子どものうち1人には知的障害があり、財産の管理や複雑な契約について、家族の支援を受けています。
家族の間では、車はもう1人の子どもが引き継ぐことで話がまとまっている。
このような場合、ほかの家族が本人の代わりに同意し、そのまま名義変更を進めてよいのでしょうか。
ここは慎重に考える必要があります。
ご本人が内容を理解して意思表示できるのであれば、その意思を大切にしながら手続きを進めることになります。
一方、ご本人が内容を理解して判断することが難しい場合には、誰が法的に本人を支援できるのか、どのような手続きが必要なのかを検討しなければなりません。
家族であることだけを理由に、ほかの相続人が本人の意思を代わりに決められるわけではありません。
また、車を引き継ぐ人と、支援を必要とする相続人の利益が対立する場合にも注意が必要です。
善意で進めたつもりでも、必要な手続きが整っていなければ、名義変更ができなかったり、後から相続について問題になったりするおそれがあります。
成年後見制度が関係することもあります
ご本人が相続や財産の処分について判断することが難しい場合には、成年後見制度などの利用を検討することがあります。
成年後見制度には、本人の判断能力の程度などに応じて、後見・保佐・補助という類型があります。
ただし、どの制度でも同じように手続きができるわけではありません。それぞれ支援できる範囲や権限が異なり、対象となる行為や付与された権限によって対応が変わります。
また、成年後見人などが選任されている場合でも、本人の財産を自由に処分できるわけではありません。
本人の利益を守ることが基本となります。
例えば、相続人の一人が成年後見人となっていて、その人自身も同じ相続の相続人である場合には、利益相反の問題が生じることがあります。
遺産分割協議などについて、特別代理人の選任が必要になる場合もあります。具体的な対応は、後見人の権限や個別の事情によって異なります。
そのため、「家族が後見人になれば、家族だけで車の相続を進められる」と考えるのは適切ではありません。
車を売却したい場合も、先に相続関係を整理しましょう
相続した車を誰も使わない場合には、売却を考えることもあるでしょう。
車検が近い、駐車場代がかかる、維持費を負担し続けるのが難しいなど、早めに処分したい事情があるかもしれません。
しかし、相続人の中に判断や意思表示について配慮が必要な方がいる場合には、売却についても慎重に進める必要があります。
特に、次の点を整理しておきましょう。
- 誰が車を相続するのか
- 売却について必要な合意や手続きが整っているか
- 売却代金を誰が受け取るのか
- ご本人の利益が適切に守られているか
車を売却すること自体が問題なのではありません。必要な合意や法的な手続きを整えずに、先に売却を進めてしまうことが問題になるのです。
また、相続放棄を検討している家族がいる場合には、車の売却や処分を先に進めないよう注意が必要です。
相続放棄は、単に車を引き継がないというだけの話ではありません。ほかの財産や借金も含めて考える必要があります。
すぐに使わない車でも、家族だけで処分を決めないことが大切です
相続した車をすぐに使う予定がない場合、しばらく保管することもあると思います。
ただ、車を動かしていなくても、駐車場代や保険などの負担が続くことがあります。
そこで、一時抹消登録などを考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相続人の間で車の扱いが決まっていない段階では、「使わないから」という理由だけで抹消や処分を進めるのは慎重に考える必要があります。
すぐに結論を出せない場合でも、車の保管状況や維持費、相続人の状況を整理しておくことで、その後の対応を考えやすくなります。
自動車の手続きと、法律上の問題を分けて考えることも大切です
今回のようなケースでは、自動車の名義変更だけを考えればよいとは限りません。
成年後見制度の利用、利益相反、相続人間の意見の対立など、法律上の判断が必要になることがあります。
一方、相続関係や必要書類が整理され、名義変更を進められる段階になれば、自動車の登録手続きを進めることになります。
それぞれの問題を分けて考えることで、どの専門家に何を相談すればよいのかも整理しやすくなります。
行政書士が対応できる相続関係の書類作成や自動車の名義変更と、弁護士などに相談すべき法律上の問題を区別することも大切です。
当事務所がお手伝いできること
ゆめのほし行政書士事務所では、名古屋ナンバーの自動車・バイクについて、相続に伴う必要書類の準備や名義変更などの手続きをお手伝いしています。
例えば、次のような場合です。
- 親が亡くなり、自動車の名義変更が必要になった
- 相続人が複数いて、車を誰が引き継ぐのか整理したい
- 相続した車を売却するため、必要な書類や手続きを進めたい
- 普通車・軽自動車・バイクの相続手続きを進めたい
- 相続関係を整理したうえで、名義変更に必要な書類を準備したい
相続人の中に知的障害のある方がいる場合でも、障害があることだけで一律に手続きができないと決まるわけではありません。
一方で、ご本人の意思確認や成年後見制度などの検討が必要な場合には、自動車の手続きだけで判断できないこともあります。
当事務所では、車両の種類や相続の状況に応じて、対応できる書類作成や名義変更などの手続きをお手伝いします。
なお、成年後見制度の利用の要否、利益相反、相続人間の争いなどについては、内容に応じて弁護士などの専門家への相談が必要になる場合があります。
急いで結論を出すことだけが、よい対応とは限りません。
まずはご家族の状況と、残された車を今後どうしたいのかを整理することから始めてみてください。
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