インターネットなどを通じて、面識のない相手と自動車を個人売買するケースは珍しくありません。
売主と買主の間で条件がまとまれば、取引を進めることはできます。しかし、車の売買では、代金の支払いだけでなく、車両の引き渡しや名義変更など、決めておかなければならないことがあります。
「お互いに納得しているから、契約書までは必要ないだろう」
「メッセージのやり取りが残っているから大丈夫」
「名義変更さえ終われば問題ないはず」
このように考えて、契約書を作らずに取引を進める方もいるかもしれません。
売買契約は、一般に、必ずしも契約書を作成しなければ成立しないわけではありません。しかし、契約書がないと、後から認識の違いが生じたときに、何を約束していたのか分かりにくくなることがあります。
契約書は、トラブルが起きたときのためだけでなく、売主と買主が取引の条件を整理し、最後まで手続きを進めるためにも役立ちます。
自動車の個人売買で契約書を作らないと、何が問題になる?
契約書を作らずに取引を進めると、売買代金や車両の引き渡し、名義変更などについて、当事者同士の認識が食い違うことがあります。
例えば、次のような点です。
- 売買代金をいつ、どのような方法で支払うのか
- 車両をいつ引き渡すのか
- 名義変更は誰が担当し、いつまでに行うのか
- 名義変更に必要な書類を誰が準備するのか
- 車両に不具合が見つかった場合、どのように対応するのか
取引を始めるときには、細かなことまで決めなくても大丈夫だと思うかもしれません。
しかし、実際に代金を支払ったり、車両を引き渡したりした後では、簡単に元の状態へ戻せないこともあります。
だからこそ、取引を始める前に、条件や役割分担を整理しておくことが大切です。
代金の支払いと車両の引き渡しを決めておく
個人売買では、売主と買主で、代金の支払いと車両の引き渡しについて考え方が異なる場合があります。
売主は「代金を全額受け取ってから車を渡したい」と考えていても、買主は「車を受け取ってから支払いたい」と考えているかもしれません。
また、代金の一部を先に支払う場合や、車両の引き渡し後に残金を支払う場合には、支払いの期限や条件も決めておく必要があります。
契約書には、売買代金の金額、支払方法、支払期限、車両の引き渡し時期などを記載し、双方が同じ内容を理解できるようにしておきましょう。
名義変更を誰が担当するのかも重要です
自動車の個人売買では、名義変更を誰が行うのかも、事前に決めておきたい事項です。
普通車などの登録自動車では、所有者が変わった場合、道路運送車両法第13条により、新しい所有者が原則として15日以内に移転登録を申請する必要があります。
一方、実際の取引では、売主が必要書類を準備したり、売主側で名義変更の手続きを進めたりする取り決めも考えられます。
法律上の申請義務と、売主・買主の間で決める実務上の役割分担は、分けて考えることが大切です。
契約書には、名義変更を担当する人、申請期限、必要書類の受け渡し、手続きにかかる費用の負担などを記載しておくとよいでしょう。
購入後に故障が見つかった場合にも、契約内容が関係します
自動車の個人売買では、購入後に故障や不具合が見つかることもあります。
そのとき、買主が「購入前から不具合があったのだから、売主に修理してほしい」と考えても、売主は「そのような約束はしていない」と考えるかもしれません。
このような場合、売主がどのような説明をしていたのか、車両の状態について何を合意していたのか、契約上どのような取り決めがあったのかなどが問題になります。
個人売買では、車両の状態や把握している不具合について、事前に情報を共有し、特別な合意があれば書面に残しておくことが大切です。
購入後に故障が見つかった場合の注意点については、「自動車・バイクの個人売買で購入後に故障が見つかった場合」でも取り上げています。

なお、契約書に「現状渡し」と記載すれば、どのような場合でも売主が責任を負わなくなるわけではありません。実際の契約内容や不具合の状況などによって判断が異なるため、記載する条件は慎重に整理する必要があります。
契約書がないと、売買を取りやめるときにも困ることがあります
取引を進めている途中で、事情が変わり、売買を取りやめたいと考えることもあるかもしれません。
しかし、契約書がないからといって、いつでも自由に契約を解除できるわけではありません。
契約が成立しているかどうか、解除できる理由があるか、すでに代金や車両を引き渡しているかなど、さまざまな事情を踏まえて考える必要があります。
また、売買契約を解除することと、名義変更を元に戻すことは別の問題です。すでに名義変更が完了している場合、契約を解除しただけで登録が自動的に元へ戻るわけではありません。
自動車・バイクの個人売買で契約解除を考えている場合は、「自動車・バイクの個人売買で契約を解除できる?」も参考になります。

すでに名義変更が済んでおり、元の持ち主に戻したい場合には、「一度、名義変更した自動車・バイクの登録は取り消せる?元の名義に戻す方法と注意点」もご覧ください。

売買契約書には、何を記載すればよい?
自動車の個人売買で契約書を作成する場合、取引の内容に応じて、次のような事項を整理しておくとよいでしょう。
売主・買主と車両の情報
当事者の氏名や住所、車名、登録番号、車台番号など、売買の対象となる車両を特定できる情報を記載します。
売買代金と支払い方法
代金の金額、支払期限、支払方法などを記載します。分割払いなどの条件がある場合は、その内容も具体的に定めます。
車両の状態と引き渡し
車両の引き渡し時期や場所、車両の状態についての説明、特別な合意事項などを整理します。
名義変更と費用負担
名義変更を誰が担当するのか、いつまでに申請するのか、必要書類をどのように受け渡すのか、手続きにかかる費用を誰が負担するのかを記載します。
予定どおりに進まない場合の対応
必要書類がそろわない場合や、支払い・引き渡しが予定どおりに進まない場合など、取引に影響する事態についても、必要に応じて取り決めておきます。
契約書は、ひな形に氏名や金額を記入するだけで十分とは限りません。実際の取引内容に合った条件を定めることが重要です。
契約書を作る前に、取引の流れを整理しましょう
売買契約書を作成するときは、書面の内容だけでなく、取引をどのような順番で進めるかも考えておきたいところです。
例えば、売買条件を決め、代金の支払いと車両の引き渡しの順番を整理し、名義変更に必要な書類や担当者を決めたうえで、合意内容を契約書にまとめる方法が考えられます。
必要書類を集め始めてから、名義変更の担当者や車両の使用場所が決まっていないことに気づくと、手続きが止まったり、書類を準備し直したりすることがあります。
個人売買の手続きは、書類を集める前の段階で整理しておくことも大切です。
すでに車を引き渡している場合は?
契約書を作らないまま、すでに車を引き渡してしまった場合でも、契約書がないという理由だけで売買契約が成立していないことになるわけではありません。
まずは、売主と買主の間でどのような合意があったのか、代金の支払いは済んでいるのか、名義変更はどこまで進んでいるのかを整理しましょう。
メールやメッセージの履歴、振込記録、車両や書類の受け渡しに関する記録なども、取引の経緯を整理するための資料になります。
相手と連絡が取れ、双方が手続きを進める意思を持っているのであれば、改めて手順や期限を話し合える場合もあります。
一方、相手が約束を守らない、代金の支払いをめぐって争いがある、契約解除について意見が対立しているといった場合には、名義変更の手続きだけでは解決できないこともあります。そのような場合には、弁護士などへの相談も検討しましょう。
当事務所がお手伝いできること
ゆめのほし行政書士事務所では、名古屋ナンバーの自動車・バイクに関する手続きについて、次のような業務を取り扱っています。
- 個人売買に伴う名義変更
車両の種類や現在の状況に応じて、必要書類の作成や登録手続きをお手伝いします。 - 自動車売買契約書の作成
売買条件や代金の支払い、車両の引き渡し、名義変更の役割分担など、当事者間で合意した内容を書面にまとめるお手伝いをします。 - 車庫証明や住所変更などの関連手続き
使用場所の変更や登録内容に応じて、必要となる手続きをお手伝いします。
自動車の個人売買では、契約書を作成することだけでなく、売主と買主がそれぞれの役割を理解し、名義変更までの流れを決めておくことが大切です。
取引の進め方や必要書類が分からずお困りの場合は、行政書士などの専門家への相談もご検討ください。
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