相続した財産の中に自動車が含まれていることはよくありますよね。そのようなときは、自動車をどうするかを決めなければなりません。
自動車を引き続き使用したい方もいますし(名義変更)、相続をきっかけに処分(廃車)したい方もいます。他にも、ひとまず使用をしないという方法もあります(一時抹消)。
この記事では、相続した自動車をひとまず使用をしない、一時抹消の進め方についてお話しします。
この記事は「ゆめのほし行政書士事務所」が作成しました。
一時抹消のメリット・デメリット
はじめに、一時抹消を行うメリット・デメリットからお話しさせていただきます。相続された自動車を一時抹消するときには、あらかじめ知っておくと良いことがあります。
一時抹消を行うメリット
1.自動車税(種別割)が課税されない
自動車は毎年4月1日時点における納税義務者へ対して自動車税(種別割)が課税されます。しかし、一時抹消を行うことにより自動車税(種別割)が課税されなくなります。また、支払い済の自動車税(種別割)についても、一時抹消を行うことにより還付の対象となります(普通車のみ)。
2.自賠責保険料の支払いをしなくとも良い
自動車は公道を走行するときには自賠責保険へ加入しなければなりません。しかし、一時抹消を行うことにより自賠責保険へ加入する義務はなくなります。また、支払い済の自賠責保険料についても、一時抹消を行うことにより還付の対象となります。
3.自動車の再登録が可能
一時抹消は自動車を廃棄処分するわけではありませんので、再登録することが可能です。
一時抹消を行うデメリット
1.再登録の手続きが煩雑になる
一時抹消を行った自動車を再登録するには、車検を受けなおしたり、自賠責保険へ再度加入しなければなりません。また、新しい車検証や新しいナンバープレートの交付を受ける必要もあります。そのため、一時抹消を行った後に再登録する手続きは、名義変更と比較すると煩雑になるといえます。
相続した自動車の一時抹消の進め方
- step1最初に確認しておきましょう
はじめに。相続する財産の中に自動車があると知ったとき、いきなり一時抹消の手続きを始めて良いものなのでしょうか。
実は、相続する財産の中に自動車があるときには最初に確認しておくことがあります。一時抹消を始める前に、次のことを確認しておきましょう。
- 亡くなられた方の国籍
- 自動車の所有者がローン会社やリース会社になっていないか
- 遺言書が残っていないか
- 相続する権利のある人たちが誰なのか
- 誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのか
- 自動車を相続する人たちの中に認知症や知的障害、精神障害のある方がいないか
- 自動車を相続する人たちの中に未成年者がいないか
これらのことを確認しないまま一時抹消の手続きを始めると、手続きそのものが上手く進まなかったり、親族の間でトラブルになってしまうおそれがあります。これらのことが終わりましたら一時抹消を始めましょう。
もっと詳しく知りたい
自動車を相続するときに確認しておくことにつきましては過去記事に詳細がありますので、よろしければご参考にして下さい。
- step2亡くなられた方の生まれてから死亡するまでを証明した書類を取得しましょう
亡くなられた方の生まれてから死亡するまでを証明した書類を取得しましょう。
これらの書類は除籍謄本や改製原戸籍という名称で亡くなられた方の本籍地のある市町村役場にて保管されています。
令和6年3月1日より最寄りの市区町村窓口にて取得できるようになりました
これまで除籍謄本や改製原戸籍などの戸籍証明書は、亡くなられた方の本籍地にある市町村役場にて取得をしなければなりませんでした。
しかし令和6年3月1日より、最寄りの市区町村窓口にてこれらの戸籍証明書が取得できるようになりました(広域交付制度)。
ただし、この制度を利用して戸籍証明書が取得できるのは相続人に限られており、行政書士による戸籍証明書の請求は原則通り亡くなられた方の本籍地へ行うこととなります。
- step3相続する権利のある人たちみんなの戸籍を取得しましょう
亡くなられた方の財産を相続する権利のある人たちみんなの戸籍謄本または抄本を取得しましょう。少し難しいですが、相続する権利のあるひとたちは次の図のようになっています。
戸籍は本籍地を管轄する市区町村にて取得することができます。
- step4誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのかの話し合いをしましょう
相続する権利のある人たちが誰なのかを把握したあとは、誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのかの話し合いをしましょう。
この話し合いのことを遺産分割協議といいます。
話し合いが終わりましたら、その内容を書面にして残しておきましょう。
この書面のことを遺産分割協議書といいます。
もし話し合いがまとまらないときは家庭裁判所にて調停や審判を行い、誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのか決定しましょう。
遺産分割協議書の作り方をもっと詳しく知りたい
遺産分割協議書そのものには法律上決まった様式はありません。亡くなられた方(被相続人)や、相続する財産、相続する権利のある人たち(相続人)を特定することができ、遺産分割の内容について相続人全員が合意したことが分かればどのように作成しても良いです。
しかし、自動車の相続では遺産分割協議書を受理する機関により独自のルールが設けられてたりします。
調停や審判とはどんなもの?
調停とは、裁判官一人と民間の良識のある人から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聴くなどして、双方が納得して問題を解決できるよう、助言やあっせんを行い、当事者間で合意が成立するよう紛争の解決を図る手続です。
そして、調停が成立しなかった場合に裁判官が当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果や資料に基づいて決定されることを審判といいます。
- step5名義人となる人の印鑑証明書を取得しましょう
自動車の名義人となる人の印鑑証明書を取得しましょう。
印鑑証明書は亡くなられた方の財産を相続する権利のある人たち全員のものを取得する必要はなく、自動車の名義人となる人のものだけ取得すれば良いです。
印鑑証明書は住所を管轄している市区町村にて取得することができます。
軽自動車の相続では住民票でも良いです
軽自動車の相続では、自動車の名義人となる人の印鑑証明書ではなく住民票を用いても良いです。ただし、有効期限は印鑑証明書と同じように発行から3カ月以内と決まっております。
- step6車検証やナンバープレートを返納しましょう
ここまで来ましたら必要な書類は全て揃っていますので、車検証やナンバープレートの返納を行いましょう(一時抹消)。
普通車の車検証やナンバープレートを返納する場所はどこ?
普通車の車検証やナンバープレートの返納(一時抹消)は地方運輸局や検査登録事務所にて行います。名古屋ナンバーは愛知運輸支局(名古屋市中川区)にて行われます。
軽自動車の車検証やナンバープレートを返納する場所はどこ?
軽自動車の車検証やナンバープレートの返納(一時抹消)は管轄の軽自動車検査協会にて行います。名古屋ナンバーは軽自動車検査協会愛知主管事務所(名古屋市港区)にて行われます。
- step7自動車税の手続きをしましょう
車検証やナンバープレートの返納が終わりましたら自動車税環境性能割(旧:自動車取得税)の申告と自動車税種別割の課税を停止する手続きをしましょう。
自動車税環境性能割(旧:自動車取得税)につきましては、自動車の相続では非課税の扱いとなっておりますので0円で申告することになります。
軽自動車の自動車税の手続きをする場所はどこ?
普通車の自動車税は県税事務所にて管理されています。県税事務所は車検証やナンバープレートの返納をするところの付近に出張所が用意されていますので、車検証やナンバープレートの返納と同日に行うことができます。
普通車の自動車税の手続きをする場所はどこ?
軽自動車の自動車税は市税事務所にて管理されています。車検証やナンバープレートの返納をするところが受理をしてくれますので、車検証やナンバープレートの返納と同日に行うことができます。
- step8自動車保険の解約を行いましょう
自動車保険には強制保険である自賠責保険と任意保険の2種類があり、解約の手続きは加入している保険会社にて行います。
- step9相続税の申告をしましょう
亡くなられた方の財産が一定金額を超えるときには相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告は、亡くなられた方が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。
自動車の相続でお困りのときは
最後までお読みいただきましてありがとうございました。今回は相続した自動車の一時抹消についてお話ししました。ご覧いただいてわかる通り、行うことがたくさんあります。
弊所は名古屋市在住の方を対象に自動車の各種手続きを行っている行政書士事務所です。自動車の相続でお困りのときはお問い合わせ下さい。
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