相続する財産の中に自動車があるときには、その自動車を、誰が、どの割合いで、相続するかの話し合いを行わなければなりません。
その話し合いを書面にしたのもが遺産分割協議書です。
では、遺産分割協議書は必ず用意しなければならないものなのでしょうか。
この記事では自動車の相続と遺産分割協議書の関係についてお話させていただきます。
この記事はゆめのほし行政書士事務所が作成しました。
この記事の結論
はじめに、この記事の結論をお伝えさせていただきます。
自動車の相続において、遺産分割協議書は必要のないときがあります。それは主に次のようなケースです。
- 有効な遺言書のあるとき
- 法定相続分で相続するとき
- 相続する車両が軽自動車やバイクのとき
- 遺産分割協議成立申立書を用意できたとき
上記のケースでは遺産分割協議書のは用意をしなくても自動車の相続を行うことができます。
自動車の相続と遺産分割協議書
それでは本題の自動車の相続と遺産分割協議書についてお話しさせていただきます。
1.原則は遺産分割協議書を用意しましょう
自動車の相続では、原則として遺産分割協議書を用意しましょう。
遺産分割協議書は車検証の名義を変更するときに必要となるのはもちろんですが、相続人同士でのトラブルを避ける役目もあります。
遺産分割協議書は相続する財産を、誰が、何を、どの割合で相続するのかを話し合った結果を書面にしたものです。
話し合っただけでは、後からになり言った、言わなかった、などのトラブルになるおそれもあります。
ただし、次に紹介するケースでは例外的に遺産分割協議書が不要となります。
2.遺言書があるとき
亡くなられた方が遺言書を残していたときには遺産分割協議書は必要ありません。
財産の処理で一番大切なことは、その持ち主である人の意思ですよね。
遺言書には、亡くなられた方が自分の財産を、誰に、何を、どの割合で相続させたいのかが明記されています。
そのため、誰が、何を、どの割合で相続するのかを話し合うことがないので、遺産分割協議書も必要ないということになります。
ただし、次のようなケースでは遺産分割協議書が必要となりますので注意して下さい。
しっかりとした遺言書を残していないとき
遺言書には記入方法や保管方法など様々なルールがあります。そのルールに従って作成させていない遺言書は効力がない可能性があります。そのようときには、遺言書そのものの存在が無効となります。
相続人全員の同意があるとき
民法907条の規定により、相続人全員の同意があるときには遺言とは異なる遺産分割協議を行うことができます。
ただし、遺言書で民法907条による遺産分割協議を明らかに禁止している内容があったときには、相続人全員の同意があったとしても遺言とは異なる遺産分割協議を行うことはできません。
3.法定相続分で相続するとき
亡くなられた方の財産を、誰が、どの割合で相続する権利があるかは法律により決められており、そのことを法定相続分といいます。
この法定相続分の通りに亡くなられた方の相続を相続するのであれば、誰が、どの割合で相続するかを話し合う必要はなくなるため、遺産分割協議書も必要なくなります。
この方法により自動車の相続を行うと、相続人が複数いるときには、自動車の名義は共有名義となります。
4.相続する車両が軽自動車やバイクのとき
相続する車両が軽自動車やバイクのときは、例外的に遺産分割協議書を用意しなくても車検証の名義を変更することができます。
その理由としましては、軽自動車やバイクは普通車と比較して、そこまで財産としての価値が大きくないため、遺産分割協議書によるトラブルの予防よりも手続きの簡素化を優先したと考えられています。
しかし、遺産分割協議書を用意しなくても車検証の名義を変更することができるとはいえ、遺産分割の話し合いそのものは必ず行わなければなりません。車検証の名義を変更する手続きにおいて書面化することまでは求められていないということです。
5.遺産分割協議成立申立書の存在
自動車の相続手続きでは遺産分割協議成立申立書というものが存在します。
その名前の通り、遺産分割の協議(話し合い)が成立したことを申し立てる書類です。
この遺産分割協議成立申立書を用意することができれば、例外的に遺産分割協議書を用意しなくても車検証の名義を変更することができます。
しかし、この遺産分割協議成立申立書を用意するためには相続する自動車の価格が100万円以下であることの証明書を添付しなければなりません。
自動車の価格はどうやって知るの?
自動車の価格は、中古車相場情報誌に記載されていたり、中古自動車査定士や(一財)日本自動車査定協会で査定を受けることで知ることができます。
6.遺産分割協議書に署名できない人がいるときは
自動車の相続では、遺産分割協議書には相続人すべての方に、その内容の理解と署名と実印の押印が求められます。
しかし、すべての人が遺産分割協議の内容を理解できたり、文字を書いたり、印鑑を押せるわけではありません。
生まれたばかりの赤ちゃんもいれば、高齢や障害のある方だっています。
そのようなときには、その人たちの代わりとなる人に遺産分割協議書に署名と実印の押印をしてらうことがあります。
自動車の相続でお困りのときは
今回は自動車の相続と遺産分割協議書についてお話をしました。
よくわからないまま遺産分割協議書を作成すると、名義変更の手続きが進まなかったり、相続人の間でトラブルになったり、ひどいときには法律違反となってしまうことさえあります。
弊所は名古屋市在住の方を対象に自動車の相続手続きを行っている行政書士事務所です。お困りの際にはご相談下さい。