相続する財産の中に自動車があると知ったとき、すぐに名義変更の手続きを始めて良いものなのでしょうか。
そうであったとしても、何を、どうすれば良いのかわからなくなりますよね。
この記事では相続する財産の中に自動車があるときに最初に確認しておくポイントについて記載します。
この記事は「ゆめのほし行政書士事務所」が作成しました。
最初に確認しておくポイント
相続する財産の中に自動車があると知ったとき、名義変更の手続きを進める前に確認しておかなければいけないポイントがあります。
相続がはじまってすぐに自動車の名義変更を行うと、手続きそのものが上手く進まなかったり、親族の間でトラブルになってしまうおそれもあります。
また、知らず知らずのうちに法律違反をしてしまうことだってありえます。
そうならないためにも、まずは次のことを確認しましょう。
1.車検証に記載されている「所有者」を確認しましょう
はじめに相続する自動車の車検証に記載されている所有者を確認しましょう。
所有者のところが亡くなられた方になっていますでしょうか?
所有者がローン会社やリース会社等になっている場合には名義を変更することができません。
所有者がローン会社になっているときはどうすれば良いの?
自動車の所有者がローン会社になっているときには、その自動車はローン会社の持ち物ということになりので、車本体は相続財産の対象から外れますが、ローン(借金)は相続の対象となります。
相続しようとする自動車が所有権留保になっているときには、ローン会社に契約者が亡くなったことを伝えたうえ、どういう契約内容になっているのか、自動車ローンは残っているのか、残っているとするとどれくらいなのか、それとも支払いが終わっているのか、など、今どのような状況になっているかを確認しましょう。
現状をしっかりと把握したうえで、自動車を引き続き使用したいのか、相続放棄を行うか、などの選択をします。
2.亡くなられた方の国籍を確認しましょう
亡くなられた方の国籍を確認しましょう。
日本以外の国籍の方が亡くなった場合には、その国の法律によって相続を進めなければいけません。
亡くなられた方が外国籍のときはどうするの?
外国籍方は日本にて住民登録を行っていません。そのため、自動車の相続手続きに必要となる印鑑証明書や戸籍謄本を取得することができません。また、印鑑登録も当然行っていないため実印の押印が必要となる委任状や遺産分割協議書も用意できないことになります。それでは自動車の相続ができなくなってしまいますので、その国の大使館にてこれらの代わりとなる書類の発行を受けて手続きを進めることになります。
3.遺言書が残っていないかを確認しましょう
亡くなられた方の遺言書が残っていないかを確認しましょう。
生前に遺言書を作成していたような言動がなかったかを思い出してみましょう。
遺言書はどう探せば良いの?
自筆により作成された遺言書を見つけたときは注意して下さい
自筆で作成された遺言書を発見した相続人は、民法第1004条の規定により、遅滞なくその遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在やその内容を知らせることにより、その内容を明確にして偽造を防止するための手続です。
そして、封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封してはいけません。
自筆で作成された遺言書を家庭裁判所へ提出することを怠ったり、その検認を経ないで遺言を執行したり、または家庭裁判所外において遺言書を開封をした者は、民法第1005条の規定により5万円以下の過料に処されるおそれがあります。
4.相続する権利のある人たちが誰なのかを把握しましょう
亡くなられた方の財産を相続する権利のある人たちが誰なのかを把握しましょう。
少し難しいですが、相続する権利のあるひとたちは以下の図のようになっています。
相続する権利のある人たちが誰なのかを把握するためには、亡くなられた方の生まれてから死亡するまでを証明する書類を取得して確認します。
これらの書類は除籍謄本や改製原戸籍という名称で市町村役場にて保管されています。
また、これらの書類は自動車の名義変更を行うときに使用しますので、相続する権利のあるひとたちを確認した後も大切に保管しておいてください。
令和6年3月1日より最寄りの市区町村窓口にて取得できるようになりました
これまでは、除籍謄本や改製原戸籍など戸籍証明書は、亡くなられた方の本籍地にある市町村役場にて取得をしなければなりませんでした。
しかし、令和6年3月1日より最寄りの市区町村窓口にて、これらの戸籍証明書が取得できるようになりました(広域交付制度)。
ただし、この制度を利用して戸籍証明書が取得できるのは相続人に限られており、行政書士による戸籍証明書の請求は原則通り亡くなられた方の本籍地へ行うこととなります。
5.誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのかの話し合いをしましょう
相続する権利のある人たちが誰なのかを把握したあとは、誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのかの話し合いをしましょう。
この話し合いのことを遺産分割協議といいます。
話し合いが終わりましたら、その内容を書面にして残しておきましょう。
この書面のことを遺産分割協議書といいます。
もし話し合いがまとまらないときは家庭裁判所にて調停や審判を行い、誰が、どういう持ち分で自動車を相続するのか決定しましょう。
調停や審判とはどんなもの?
調停とは、裁判官一人と民間の良識のある人から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聴くなどして、双方が納得して問題を解決できるよう、助言やあっせんを行い、当事者間で合意が成立するよう紛争の解決を図る手続です。
そして、調停が成立しなかった場合に裁判官が当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果や資料に基づいて決定されることを審判といいます。
遺産分割協議書の作成方法について詳しく知りたい
遺産分割協議書の作成方法について詳しくお話している記事がありますので、よろしければそちらを参考にして下さい。
6.自動車を相続する人たちの中に認知症や知的障害、精神障害のある方がいないかの確認をしましょう
自動車を相続する人たちの中に認知症や知的障害、精神障害のある方がいないかの確認をしましょう。
相続する人たちの中に認知症や知的障害、精神障害のある方がいる場合には、その人たちは相続の話し合いに参加したとしても、自動車を相続するのか、それとも相続しないのか、など物事の判断ができないことがあります。
物事の判断ができないことをいいことに、自動車を相続させないように話の方向性を持って行かれたりすると、その人たちに金銭面で損害が生じてしまします。
そうならないようにするため、物事の判断ができない人たちの代わりとなってが話し合いに参加する人が必要となります。
障害などにより物事の判断ができない人たちの代わりとなって手続きを進める人のことを成年後見人といいます。
成年後見人がいない場合は家庭裁判所へ成年後見人の申立てを行いましょう。
判断能力のない方が遺産分割協議をしたらどうなる?
認知症や知的障害、精神障害など、判断能力のない方がした遺産分割協議(法律行為)は民法3条の2項の規定により無効となったり、民法第120条1項の規定により取り消しの対象となります。
7.自動車を相続する人たちの中に未成年者がいないか確認しましょう
自動車を相続する権利のある人たちの中に未成年者(18歳未満)がいないか確認しましょう。
相続する権利のあるひとたちの中に未成年者(18歳未満)とその親がいる場合には、親はその未成年者の法律行為を代わりに行う立場にいます。
未成年者にとって不利益な相続とならなければ何も問題はないのですが、親はこの立場を利用して、自分に有利なように自動車を相続することだってできてしまいます。
親が有利に相続するということは、未成年者の子にとっては不利な相続になるということです。
そうならないように、相続する権利のあるひとたちの中に未成年者(18歳未満)とその親がいて、未成年者が不利益を受けるときには、未成年者を守るべき人の存在が必要です。
その人たちのことを特別代理人といいます。特別代理人は未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。
未成年者が不利益を受けないときは特別代理人はどうするの?
相続する権利のあるひとたちの中に未成年者(18歳未満)とその親がいる場合で、親と未成年者がそれぞれ法律で決められた割合で平等に相続するときには特別代理人を申し立てる必要はありません。自動車の名義は共有名義となります。
産まれる前の胎児はどうなるの?
民法第886条の規定により、相続では産まれる前の胎児についても既に産まれたものとみなされます。よって、胎児も未成年者に含まれることになります。
法律違反に気を付けて下さい
自動車を相続するときは様々な法律に則り手続きを進めて行かなければなりません。
知らず知らずのうちに法律違反をしないように注意しましょう。
名義変更を放置しないようにしましょう
自動車を相続したときは道路運送車両法第12・13条に基づき15日以内に車検証の名義変更を行わなければなりません。
あまりに車検証の名義変更手続きを放置していると道路運送車両法第109・2項の規定によりの50万円以下の罰金に処されるおそれがあります。
罰金とはどういうもの?
罰金とは刑法に定められている刑罰の一種で、違反者に制裁として課される金銭的な負担のことです。罰金刑を受けたときは前科の扱いとなり、一度前科がついてしまうとその事実は消えることはありません。 前科の記録は検察庁と本籍地のある市区町村の犯罪人名簿に記録されます。
自動車税(環境性能割)につきましても、相続した自動車は非課税の扱いですが、地方税法160条2項の規定により15日以内にこれらの事項及び納税義務者の変更があったことをを申告しなければなりません。
そのほか、自賠責保険証も期限や罰則などはありませんが自動車損害賠償保障法第7条2項基づき氏名や住所に変更があったときにはその手続きをしなければなりません。
自筆の遺言書は家庭裁判所へ持って行きましょう
自筆で作成された遺言書を発見した相続人は、民法第1004条の規定により、遅滞なくその遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりません。
そして、封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封してはいけません。
自筆で作成された遺言書を家庭裁判所へ提出することを怠ったり、その検認を経ないで遺言を執行したり、または家庭裁判所外において遺言書を開封をした者は、民法第1005条の規定により5万円以下の過料に処されるおそれがあります。
過料とはどういもの?
過料とは、行政上の秩序を維持するために違反者に制裁として課される金銭的な負担のことです。罰金とは異なり、過料に科せられた事実は前科にはなりません。
遺言書は捨てたり書き換えたりしないで下さい
遺言書をわざと捨てたり、内容を書き換えたりしないようにして下さい。遺品整理のときにうっかりと捨ててしまったことと、わざと捨てたり内容を書き換えることでは意味が変わってきます。
遺言書をわざと捨てたり、書き換えた場合には、民法891条の規定により相続する資格を失ってしまします。
そればかりか、遺言書をわざと捨てたときは刑法259条の私用文書等毀棄罪が成立し、5年以下の懲役刑に処される可能性があったり、遺言書を偽造する行為は、刑法159条1項の有印私文書偽造罪が成立し、3ヶ月以上5年以下の懲役刑に処される可能性があります。
自動車の相続手続きに困ったときは
今回は自動車を相続するときに最初に確認しておくポイントについて解説しました。ご覧いただいてわかる通り、確認するべきことがたくさんあります。
弊所は名古屋市在住の方を対象に自動車の相続手続きを行っている行政書士事務所です。自動車の相続手続きでお困りの際にはご相談下さい。
家庭裁判所にて行う手続きは対応しておりません
弊所では家庭裁判所にて行う手続きは対応しておりません。
家庭裁判所にて行う手続きには、「遺言書の検認、遺産分割の調停・審判、後見人の申立て、特別代理人の申立て」があります。そのようなケースでは、お客様ご自身で行っていただくか、弁護士事務所様または司法書士事務所様へご依頼して下さい。
相続税・贈与税の申告・相談は対応しておりません
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